ブリのなめろうを餃子に
前回に続き、脂を美味しく食べようという話でございます。
国内の話ではありますが8月から3月くらいにかけて、魚は脂がのってくる事が多いです。
海水温の影響で、魚の胃でのペプシンやトリプシンといった酵素活性に変化が出るとかで、肉や脂をまとって体温を維持するためとか言われていますが、我々にとっては非常にありがたいと話ではあります、まあ値段はしますが。
勿論、美味い魚は沢山ありますが、ブリの栄養価の優秀さはなかなか大変なもので、100gあたりでタンパク質が20〜22g、EPA-DHAなど不飽和脂肪酸が6〜10g程摂取可能でサプリいらずな食材です。
成人60キロで1日に必要な脂質が飽和脂肪酸が約7〜11gで不飽和脂肪酸が約1.8〜2.4g程ですから多すぎるくらいですね。
また大型魚になりますので腐敗するスピードが比較的ゆっくりな為、エイジングビーフのように熟成が可能ですので、そのままでもじゅうぶんグルタミン酸など含み美味しいのに更にイノシン酸などアミノ酸を生成して美味しく出来ます、ヤバイ魚ですね。
僕は漁には出ませんので付き合いのあった漁師談ですが、最近は大概は活け〆にしてますが、締め方次第で味がだいぶ変わるそうです。
ブリは元気で力も強いですから、電気ショックを与えて動きを止めてから脳〆などを行い暴れない様にしてからすぐに血抜きをして、浸透圧による流出を防ぐ塩水で作った潮氷で保冷、などと漁師さんも色々な技を用いて新鮮かつ美味しく提供できるよう工夫しているようです。
特に生魚の味にうるさい日本ではそういったスキルが半端ではないようですね。
基本的に肉の旨味はイノシン酸でして、これは体内のATP(アデノシン三リン酸)分解されて出来ますが、魚が暴れるとATPが消費されてしまうのを脳や脊椎を破壊して動きを止め、ATPを残すという技術ですね。
残酷ですが、誰がこんな技を考えたのか、、。
また、乳酸などの疲労物質が蓄積する事で味を劣化させるのを防いだり、死後硬直を遅らせることで腐敗を抑制し運送の鮮度ロスを防ぎ、熟成までの時間を稼ぐ、内出血によって起こる身の劣化を防いだりと色々な要素があります。
さらに、微生物の繁殖が起こりやすい血液を抜くことで繁殖を抑制し、さらに熟成させる事も可能になります。
更に高度な技術を要する神経〆という技法もあるようです、なかなか視覚的にシュッキングな技ですから、一度調べてみてください。
どうせならここまで色々な配慮をして下さる方に感謝して、ベストな状態で食べたいものです。
ブリの脂は融点が常温以下の不飽和脂肪酸だけでなく16度とやや高いオレイン酸や、アラキドン酸やリノレン酸といった飽和脂肪酸も含みますので、多少は火入れをした方が脂肪の溶けるような滑らかさと甘さを感じやすいですが、水分含有率が多い為に火入れをしすぎるとパサつきが出るだけでなく、水分と共に油分も流出しやすくなります。
食感などは好みがありますので、詳しくは書きませんが、僕自身コリコリした食感も魅力と思いますので、あまり寝かさずに硬直が残ってるくらいで調理するのが好きですね。
なので、旨味を引き出すために大葉、生姜、味噌など酵素を多く含む食材と混ぜ込み、いったんなめろうを作ってからアミノ酸に分解されるように少し置き、のちに餃子に包んでみました。
皮に包んでしまう事で水分の流出を皮内に留め、かつ完全に火入れがされずに半生に仕上がりやすくなり、一石二鳥ですね。
なるべく大判の皮にたっぷり包んだ方が火が入り過ぎないですし、ベストを尽くすならば180度くらいで10秒ほど揚げると最高によく仕上がります。
参考にしてみてください。
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